岩手県遠野市の道の駅で手作り味噌の瓶が棚に並ぶ作業が続く
朝もやのなか、遠野市道の駅のガラス戸がゆっくり開く。冷たい空気が入り込み、木の床に薄い霜の跡が残る。作業員が手桶を持ち寄り、味噌の熟成樽を開ける。樽の蓋が外れると、発酵した大豆の香りが静かに広がる。
岩手県遠野市にある道の駅「遠野風の丘」では、毎年この時期に手作り味噌の瓶詰め作業が行われる。地元農家が育てた大豆と米麹を合わせ、約一年かけて熟成させた味噌を小瓶に詰める。瓶の容量は300グラムと500グラム。1日あたり120本を目標に、3人のスタッフが手作業で進めている。
味噌は地元産の「遠野大豆」を使っている。遠野盆地で栽培されるこの品種は、粒が大きくタンパク質含有量が高い。2025年度の収穫量は約18トン。味噌蔵の温度は13度に保たれ、湿度70パーセントで管理される。熟成期間は平均11か月。発酵の進み具合は毎日pH値と塩分濃度で確認される。
瓶詰め作業は午前8時から始まる。まず味噌を木べらでかき混ぜ、均一にする。次に計量器で300グラムまたは500グラムを量り、ガラス瓶に詰める。瓶の内側に気泡が残らないよう、へらで丁寧に押さえ込む。蓋を締めた後はラベルを貼り、箱に詰めて冷蔵庫へ運ぶ。冷蔵庫の温度は5度に設定されている。
味噌の味は年ごとに微妙に変わる。2025年度は大豆の糖度が高かったため、甘みがやや強い。塩分濃度は13.8パーセント。熟成途中で味見をしたスタッフは「まろやかさが残る」と話した。瓶詰めされた味噌は、その日の午後から道の駅の直売コーナーで販売される。価格は300グラム瓶が680円、500グラム瓶が980円。
道の駅の隣には味噌蔵があり、樽が20本並んでいる。樽の容量は各500キログラム。樽の表面には「2025年度遠野味噌」と墨で記されている。味噌蔵の壁は土壁で、夏は涼しく冬は温かい。温度計と湿度計が壁にかけられ、毎日午前と午後の2回記録される。
味噌の瓶詰め作業は12月上旬まで続く予定だ。12月には味噌を入れたおにぎりが道の駅の軽食コーナーで提供される。味噌おにぎりは1個180円。地元住民の朝食需要に応えるため、毎日30個を用意する。作業は静かに、淡々と続けられている。